Evidence for metabolic provisioning by a common invertebrate endosymbiont, Wolbachia pipientis, during periods of nutritional stress.Brownlie JC, Cass BN, Riegler M, Witsenburg JJ, Iturbe-Ormaetxe I, McGraw EA, O'Neill SL.
PLoS Pathog. 2009 Apr;5(4):e1000368. Epub 2009 Apr 3.
ボルバキアは昆虫の細胞内に共生-寄生する細菌で、細胞質不和合を引き起こすことで集団内に広がる(以前のエントリで簡単に紹介した)。
ところがボルバキアの中には細胞質不和合を引き起こさないものも知られている。この場合、感染個体に何かメリットがなければボルバキアは集団中で広がらないと考えられる。
実際、「
Wolbachia:寄生者から共生者へ」で紹介したようにボルバキアは宿主の産卵数を増加させることが報告されている。また、ウィルスなどから宿主を守ることも明らかとなっている。
さらに、フィラリアの一種であるマレー糸状虫ではボルバキアを除去すると生育、繁殖が不可能になることが知られている。これはフィラリアがヘム及びリボフラビンの合成系を欠いていることによる。進化の過程でこれらの合成をボルバキアに依存するようになったのだろう。
昆虫ではヘムの生合成をボルバキアに完全に依存することはないと考えられている。しかし、上記論文の著者達は鉄代謝の一部をボルバキアに依存している可能性はあると考え、鉄の供給をコントロールして産卵数を測定する実験を行った。材料はキイロショウジョウバエ。その結果、ボルバキア感染は通常の鉄供給下では産卵数に影響を及ぼさないが、鉄の欠乏、あるいは過剰時には産卵数を増加させることが明らかとなった。また、野外採集の雌成虫の体内に含まれる鉄が十分ではないことも明らかになった。
以上の結果はボルバキアが鉄の代謝を介して宿主に良い影響を及ぼし、集団中に拡散している可能性を示すものだ。ただ、データはあまり「綺麗」ではないところもある。
鉄が過剰なシチュエーションってキイロショウジョウバエでは考えにくいんだけど、吸血昆虫ではそういうことがあるだろうし、鉄過剰に対する対応にボルバキアがからんでいたりもするかもしれない。

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