Toth AL, Varala K, Newman TC, Miguez FE, Hutchison SK, Willoughby DA, Simons JF, Egholm M, Hunt JH, Hudson ME, Robinson GE.Wasp Gene Expression Supports an Evolutionary Link Between Maternal Behavior and Eusociality.
Science. 2007 Sep 27; [Epub ahead of print]
PMID: 17901299 [PubMed - as supplied by publisher]
同じ真社会性昆虫であってもアシナガバチとミツバチではずいぶん社会形態が異なる。ミツバチでは巣は「巣別れ」によって増える。巣別れ時には巣別れする女王に働き蜂(ワーカー)が付き添い、女王は新コロニーに移ってすぐに他の労働なしに産卵のみを行う。
これに対して「原始的な」社会形態を有するアシナガバチでは女王が単独で巣作りを開始し、産卵しワーカーを育てるところからコロニーが始まる。コロニー創設期における越冬個体の行動は単独性の狩蜂とそんなには違わないが、やがてワーカーが羽化してくると産卵に専念する「女王」へと行動を変える。
アシナガバチの個体はそれゆえに4つのカテゴリーに分割可能だ。産卵-子育ての両方を行う「創設期の女王(foundress)」、産卵のみを行う「女王(queen)」、子育てのみを行う「ワーカー(worker)」、越冬に備え、産卵も子育ても行わない「越冬前の女王(gyne)」である。
進化的には、単独性で自ら巣作り、産卵、子育ても行う蜂から、産卵行動はとらないワーカーを持つ社会性の蜂が出現したと考えられている。このような過程では本来ワンセットであった産卵と子育ての「乖離」が起こったと考えられている。それゆえ「創設期の女王」と「ワーカー」の子育て行動の進化的な起源は一つであり、子育て時の脳における遺伝子発現プロファイルは似ていることが予想できる。しかし、実験的な検討は行われてこなかった。
上記論文ではアシナガバチの一種、
Polistes metricusを材料に、454シーケンサーを用いて大規模な発現解析(391,157個のcDNA!!)を行った結果が報告されている。
得られたcDNAの配列はミツバチゲノムの3,017の遺伝子に当てはまり、ミツバチのゲノムのアノテーションに基づいて機能の推定がなされた結果(ミツバチだって機能解析されていないものがほとんどだが)、32の行動関連遺伝子が見つかった。これらの遺伝子の発現プロファイルは「創設期の女王」と「ワーカー」で似通っていた。以上の結果は創設期女王とワーカーの子育て行動の分子基盤が共通していることを示し、その進化的な起源が一つであること、すなわちワーカーでみられる「弟妹育て行動」は「子育て行動」を起源としているという仮説を支持するものである。
この仕事は454シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析としては初期のものであり、この次世代シーケンサーの威力を改めて認識させられた論文であった。この手法が普及すれば、非モデル昆虫における分子生物学的解析の敷居はかなり低くなるだろう。

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