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カテゴリ:書籍紹介
  • 甲殻類学
    [ 2007-05-31 19:20 ]
  • 阻害剤活用ハンドブック
    [ 2007-02-09 18:10 ]
  • 線虫実験法
    [ 2006-11-24 17:55 ]
  • フィールドの寄生虫学
    [ 2006-09-19 17:45 ]
  • 天使の囀り
    [ 2006-08-15 18:11 ]
  • クマムシ?! 小さな怪物
    [ 2006-08-09 13:02 ]
  • プリオン説は本当か?
    [ 2006-05-23 17:14 ]
  • 休眠の昆虫学
    [ 2006-01-08 17:45 ]
  • 線虫の生物学
    [ 2006-01-03 20:59 ]
  • エンブリオ
    [ 2005-10-31 16:11 ]


甲殻類学





 全体的に面白かったが、特に第六章の朝倉彰さんによるヤドカリの章が印象に残った。

 以下、私の常識を覆した変わったヤドカリを列記。
 
 チモールオオヤドカリ:貝を背負うヤドカリでは最大。タラバガニとかヤシガニとかは大きいけれど貝は背負わない。このヤドカリの腹部は相対的に小さいが、柔らかく、体全体に比べればアンバランスに小さな貝を背負い、腹部を守る。腹以外の貝に収納できない部分は硬くてゴツイ。腹部を見なければカッコいいのだけれどなあ。

 サソリヤドカリ:深い海に沈んだ髄の腐った筒状のトウモロコシから見つかる。もちろん他の筒状のものからも見つかるのだが。

 ザイモクヤドカリ:海に沈んだ木に穴を開けてその中に潜む。多くのヤドカリが鋏で蓋をするのに対し、ザイモクヤドカリでは硬化した腹端を蓋として用いる。木という陸地由来のものを使うのも面白いし、逆転の発想(違うか)が素晴らしい。

 イガグリホンヤドカリ:普通のヤドカリは貝殻が窮屈になったら次の貝殻を探して、そちらに引っ越す。ところが、イガグリホンヤドカリは貝に付いたイガグリという刺胞動物の群体が貝の形に適宜成長するので引越しの必要が無いらしい。生ける服といったところか。同様にトガリツノガイではコケムシの群体が成長するらしい。

 イギョウシンカイヤドカリ:体はトゲトゲしくてゴツイが腹部は貧弱。何に守られているか初めはわからなかったそうだが、イソギンチャクが腹部に付いた個体が見つかった。貝にイソギンチャクを付ける奴は有名だけれど、直でイソギンチャクというのもありなのかも。

 ヤドステヒメホンヤドカリとハダカホンヤドカリ:普通ヤドカリは敵に襲われると、貝に引きこもり、容易には出てこない。無理に引っ張ると腹が千切れるらしい。ところが、この二種はすぐに殻を捨てて、裸で逃げ出すらしい。逃げ足は速いとのことなのだが...。

 イラストでしか魅力が伝わらぬものも多数あるので、手にとって直接ご覧になることを強くお勧めする(イギョウシンカイヤドカリは特にカッコいい)。


←一日一回の応援を宜しくお願いします。 
by g-hop | 2007-05-31 19:20 | 書籍紹介


阻害剤活用ハンドブック






阻害剤を「活用」するために便利な一冊。阻害剤を用いた実験で結果の解釈に関して慎重にならなければならないことは言うまでもないが、未だに強力な研究ツールとして阻害剤が活用できることもまた確かである。使用上の注意点や、溶媒、保存方法、入手先など痒いところに手が届く内容となっている。

これまでは企業発行のカタログに依存していたが、それとは明らかに異なる視点、精神で書かれた本書は関連研究をしている、あるいはこれから考えている人には重宝する一冊であると思う。
by g-hop | 2007-02-09 18:10 | 書籍紹介


線虫実験法
線虫実験法 
日本線虫学会 2004年3月25日発行

以前から気になっていた線虫実験法を先週セミナーで中央農研にお邪魔した際に購入。書店には並んでおらず、直接購入or通信販売しかできない。

まず、手にして驚いたのは3000円とは思えない厚みと質感だった。学会の直接出版とのことで儲けは考えていないらしい。内容についてはリンク先を参照して頂きたい。

序文に謳われているC.elegansを用いた研究と、それ以外の動物、植物寄生性、あるいは土壌自活性線虫を用いた研究を車輪の両軸として進めていくという視点を目にして感銘を受けた。いや、正にそういう視点で将来的に何かできないかなという興味を持ってこの本を購入したのだが。昆虫関係の類書で同様の視点が序文で述べられているのを見たことがなかったために驚き、感動したのだった。昆虫関係の類書でショウジョウバエについて述べられているとしたらそれは大体悪口であるという印象を私は持っている。「昆虫学者」の多くはキイロショウジョウバエなんかに興味はない、あるいは嫌いなのだという点については印象というよりも私の中で事実と化しつつある。

生物間相互作用を考える上で(自由生活から動植物寄生性)、あるいは幅広い環境への適応を考える上で(海にも沢山の線虫がいる。口も肛門も退化し、共生細菌に依存しているものがいる。耐無水生存に入れる種も複数いる)、線虫は魅力的な材料に思える。



←いい水より上にいられる幸せ
by g-hop | 2006-11-24 17:55 | 書籍紹介


フィールドの寄生虫学


「フィールドの寄生虫学」という名前だが、内容は水生生物の寄生虫に限られている。以前から寄生虫は面白いと感じていて、特にフクロムシのような甲殻類の寄生者に興味があったので購入した。まだ全てを精読したわけではないのだけれど、おもしろきもちわるくてオススメの一冊。

フクロムシという生き物をご存じだろうか? 幼生の形状からフジツボに近縁であることが伺い知れるものの、成体はカニやヤドカリなどの内部寄生者である。キプリス幼生と呼ばれるフジツボと共通のステージで海中を移動し、宿主の体に付着するとケントロゴンと呼ばれるステージに分化する。ケントロゴン内ではバーミゴンと呼ばれる次のステージが分化し(といっても元の姿と関係の無い、細胞塊、あるいは細胞であるのだが)宿主の中に注入される。バーミゴンは成長し、成体になる。成体フクロムシの体はインテルナとエクステルナから成る。

インテルナと呼ばれる本体は植物の根のような形状でとても甲殻類には見えない。

エクステルナと呼ばれるカニの腹部に見られる器官はフクロムシの生殖器官であり、インテルナと繋がっている。精巣と卵巣を併せ持つことから長らく雌雄同体であると考えられてきたが、実際にはエクステルナに雄のキプリス幼生が入り込んで精巣に分化することが明らかになっている。

エクステルナの形状は付いている場所的にもカニの卵塊のようでもあり、実際にカニは卵のようにエクステルナを清掃する。雄のカニに寄生したフクロムシは雄の雌化を引き起こす。これはエクステルナによる造雄腺(雄化ホルモンの合成器官)の破壊によって起こる。雌の卵巣もエクステルナによる破壊を受けるため、カニは自身の卵は作れない。神経系も生きているのが不思議なくらい破壊されていることがあるらしい。

フクロムシは自身の卵が成熟するとカニに卵を放出させる姿勢をとらせ、産卵を行う。数回の産卵で卵巣が消耗したエクステルナはカニによって食べられる。インテルナは再びエクステルナを再生させて、雄を待つ。

恐ろしく、生物学者としてはなんとも魅力的な系だと思う。今ならできることが沢山思いつくが、入手は容易ではなさそうだ。まずは実物を入手し、基礎的な実験を行うのが先決と考えて、関係している人にコンタクトをとりはじめている。自宅の空き水槽に収容することになるだろう。もし、イソガ二のフクロムシを見かけて、提供してくださるかたがいらっしゃったら、一報ください。釣り餌屋のつてと、自己採集で探してはみますが。

他にも、こちらは珍しくて実験は不可能だろうがヒメヤドリエビという寄生者もカッコいい。頭部、胸部、腹部のあるタンツルス幼生が宿主に頭部でくっつき、口針を刺した後で、胸部と腹部が取れてしまうのである。生殖腺は頭部から発生する。はっきり言ってジオングより凄い。

フクロムシもそうだが、昆虫に近縁でありながらこの目茶目茶な発生様式は何なのだ。幼生期の変態の複雑さといい、発生生物学的な珍妙さで言ったら、昆虫は甲殻類に遠く及ばない気がする。







by g-hop | 2006-09-19 17:45 | 書籍紹介


天使の囀り



昨日のハリガネムシによる行動制御の論文を紹介したエントリには予想外の反響があった。気持ち悪いからなあ。セナガアナバチは未だに当ブログの検索ワードランキング1位だし、やはり寄生とか「ゾンビ化(笑)」というのは、それを聞いた人をぞっとさせると共に、怖いものに惹かれるという人間の欲求を満たすのだろう。

ゾンビ化されたゴキブリは何も考えていないと思うが、自殺するコオロギは「何のつもりで」水に飛び込んでいるのか、これは大変興味深い問題だと思う。どの程度解析されているのか知らないけれど、普通のコオロギは水に入ろうとはしない。狂犬病が発症した哺乳類は反対に水を怖がるようになる。この場合、水を怖がるようになることがウィルスにとって得なのかどうかは知らないが、恐らく私も感染すると理屈ではわかっていても水が怖くなるのだろう。発症後の致死率の高さもそうだが、恐ろしい病気だと思う。

私はホラーもの、特にテクノスリラー系のものが好きで色々読んでいるが、寄生による人格改変の恐怖をテーマにした作品としては貴志祐介の「天使の囀り」が面白かった。ネタバレなしで説明するのが苦手なので詳細は省くが同じ著者の作品なら「十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA 」とか「黒い家」よりも映画化に向いているような気もする。寄生ファン(?)のヒトにはお勧めの秀作だと思う。


←クリックお願いします。

by g-hop | 2006-08-15 18:11 | 書籍紹介


クマムシ?! 小さな怪物


岩波より「クマムシ?!小さな怪物」という本が出版されたようだ。読んでみよう。リンク先ページにある、歩くクマムシは必見。彼らの可愛さをよく表現できていると思う。動いている姿を見てこれほど癒される無脊椎動物もいないだろう。見た目は全然怪物ではない。しかし、彼らの極限環境耐性は正に怪物だろう。プレゼントにあるクマムシのぬいぐるみは微妙だなあ。

ところでタイトルの「?!」は「小さな怪物」の後に配した方がいいと思うのは私だけ?



by g-hop | 2006-08-09 13:02 | 書籍紹介


プリオン説は本当か?


週末に読み終えました。プリオン説が「説」に過ぎず、タンパク質が病原体として振る舞うことに疑義を唱える人が多いのは知っていましたが、これ程不完全なものであるとは思いませんでした。

特に、病原体の持つ耐性が半ば伝説であり、ウィルスを病原体と考えても説明可能であること、ファージであっても脳のサンプルと混ぜると塩素に対する耐性が向上することには驚きを隠せません。病原体のウィルス的な振る舞いや、異常型プリオンの量とと病原体の感染価との乖離などは、異常型プリオンが病原体ではないことを強く匂わせます。近代生物学のあり方も含め、色々と考えさせられる良書でした。また、狂牛病を巡る食の安全性の検査基準について改めて考えさせられるきっかけも与えてくれました。

自然科学ランキング。更新が滞りがちですが引き続き応援宜しくお願いします。

by g-hop | 2006-05-23 17:14 | 書籍紹介


休眠の昆虫学



休眠の昆虫学
東海大学出版会
田中 誠二 、 小滝 豊美 、 檜垣 守男 編

変温動物である昆虫にとって温帯の冬は厳しい季節であり、多くの種は休眠状態で冬を過ごします。昆虫における休眠(diapause)の定義は、不利な季節に先立って起こる自発的な発育停止です。日長や餌の質、あるいは低下し始めた温度そのものに反応し、昆虫はその発育を自ら停止し、冬に備えるのです。また、春は冬越ししていた多くの昆虫が活動を再開する時期ですが、一度停止した発育は冬の間にどのようにして解除されているのでしょう。

この本では「休眠状態にある昆虫がどのような生理状態にあるのか」、といった問題ももちろん扱われてはいますが、むしろ「いかなる刺激で、どのような過程を経て発育を停止し、発育停止はいかにして解除されるのか」といった問題や、「休眠自体にどのような生態的意味があり、それはどのように進化してきたのか」といった問題を多く扱っています。

四季を身近なものとし、季節ごとに鳴く虫の声を楽しむ文化を我々は持ちます。虫が如何にして季節を知り、一年を設計しているのかという問題に想いを巡らせることは、巡る季節の感じ方を一層豊かなものにしてくれることでしょう。

生態、生理、生化、分子生物学的なアプローチでこの問題を追っている研究者達が、最新の研究成果を示しながら昆虫の季節適応の仕組みを紹介している一冊。私も分筆させていただいておりますし、ネムリユスリカについても紹介されています。是非、ご一読ください。

PS.自由になるお金が少ない高校生などは是非、近くの公立図書館にリクエストしてみてください。大抵の図書館は住民の声を待っているようです。
by g-hop | 2006-01-08 17:45 | 書籍紹介


線虫の生物学



線虫の生物学  石橋信義 編 東京大学出版会

タイトルの通り、線虫の生物学について基礎から応用までバランス良く紹介されている本です。

私は昆虫を材料にして研究をしてきた人間で、昆虫の多様性やその研究対象としての面白さにほれ込んでもおります。仕方のないことなのかも知れませんが知識も昆虫に偏っています。クモ、ダニなどは昆虫系の学会でも発表がありますし、「お隣さん」としてエビやカニについても少々の知識は持ち合わせているつもりです。しかし、線虫についてはこの本を読むまでC.elegansに関して少々知っていただけでした。シンプルな生物。そういった先入観は、線虫に対する私の認識を誤らせていました。

まず、その多様性。見積もりによっては1億種とも言われます。約半数の種が海に住み、25%が土壌と淡水の自活性、残りの25%が植物や動物に寄生する寄生性です。

線形動物の名が示すように、基本的な形は糸状のシンプルなものですが、中には相当奇妙だったり格好の良いものも含まれています。奇妙な形のものは海に生息するものに多いようで、ひだの間に細菌を住まわせそれを食べたり、体内に共生する細菌に依存して消化管が退化しているものもいます。

寄生性のものに関しては応用的にも重要です。本書では古代から現在に至るヒトとセンチュウとの関わりを取り上げている点でもユニークです。マツノザイセンチュウ、ウンカシヘンチュウなどは昆虫研究者にも馴染み深い種で、改めて興味深く読みましたが、この他にも哺乳類に寄生する線虫の興味深い生態なども詳しく紹介されています。クリプトビオシスについてもまとまって紹介されており、興味深く読みました。

問題点があるとすれば引用文献が殆ど示されていない点でしょうか。ページ数の問題等もあったのかも知れませんが、興味を持った現象をさらに詳しく知ろうというときには大きな障害となります。

とはいえ、まずは知ることが重要です。知らなければ「無いのと同じ」。知ることさえできれば後はどうとでもなります。

線虫の魅力について網羅的に示した一冊。オススメです。


ブログランキングの投票はこちらから。現在大体5位くらいでしょうか。
by g-hop | 2006-01-03 20:59 | 書籍紹介


エンブリオ

 「エンブリオ」読了しました。

生殖医療の未来について「起こり得ること」を描いて倫理的な問題提起をするというのがテーマのようです。既成の価値観への挑戦、日本の医療への疑問など主人公の主張には耳を傾けるべきところが多くあります。そんな彼の「できることは何でもしてしまえ」というスタンスで進められる医療の姿に、多くの人は疑問を感じざるを得ないでしょう。そして、彼の行為を現行法で裁けないと知ってあるいは愕然とするかもしれません。

小説としてはキャラクター設定、ストーリーが練りきれていない感があります。クライトンの作品のように淡々としていたほうがまだいいな、というのが正直な感想。その辺の違和感を私は感じましたが、総じて考えさせられる所の多い小説でした。
by g-hop | 2005-10-31 16:11 | 書籍紹介

    

とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。
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