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カテゴリ:昆虫関係論文
  • 足音から進化した音響シグナル
    [ 2010-04-19 19:24 ]
  • 細菌によって作られる緑の島
    [ 2010-04-13 20:42 ]
  • カメムシの幼若ホルモン
    [ 2009-12-09 18:59 ]
  • カイコの系統間のゲノム比較
    [ 2009-11-13 19:13 ]
  • 昆虫と放線菌の共生に関する総説
    [ 2009-10-28 18:56 ]
  • クモ:スパイダーマンのようではない?
    [ 2009-10-26 20:16 ]
  • イモムシの起源はカギムシ(笑)
    [ 2009-10-08 20:13 ]
  • 蜂擬態ランの視覚的擬態
    [ 2009-10-07 18:57 ]
  • 遠隔操作されるカナブン
    [ 2009-09-28 18:58 ]
  • 分子昆虫学-ポストゲノムの昆虫研究-
    [ 2009-09-01 18:07 ]


足音から進化した音響シグナル



The evolutionary origins of ritualized acoustic signals in caterpillars
Jaclyn L. Scott, Akito Y. Kawahara, Jeffrey H. Skevington,Shen-Horn Yen, Abeer Sami, Myron L. Smith, Jayne E. Yack
Journal name: Nature Communications
Volume:1,Article number:4

生物は様々な方法でコミュニケーションをとる。視覚、聴覚、化学物質など様々な方法でコミュニケーションが行われている。初めは種内コミュニケーションと直接関係のない形質の「儀式化」が進化の過程で起こり、コミュニケーションの進化が起こると考えられているが、その進化の道筋について具体的な道筋が示された例はごく少ない。

上記論文ではカギバガ科の蛾の幼虫を材料に、種内競合が起こる際に発音する種、しない種の系統関係を調べ、各形質との関係について考察している。

競合の際に発音する種では、幼虫の最後部の腹節に発音に関与するオール状の発音器官が存在し、腹脚は無かった。一方、発音しない種では同じ腹節に腹脚が存在していた。系統関係の解析では、腹脚が存在するものが祖先的であり、その後、腹脚を失ったものの中から、発音に必要なオール状器官を獲得したものが出現したことが示唆された。積極的に発音せず、最後部の腹節を移動のために用いている祖先的な種でも、移動の際には音が発生する。

以上の結果は歩行時に発生する音が、後のより強調された音響シグナルの進化の源となった可能性を示したものであり、個体間シグナルの進化を考える上で大変興味深いと感じた。


←現在4位です。ありがとうございます。
by g-hop | 2010-04-19 19:24 | 昆虫関係論文


細菌によって作られる緑の島



Plant green-island phenotype induced by leaf-miners is mediated by bacterial symbionts.
Kaiser W, Huguet E, Casas J, Commin C, Giron D.
Proc Biol Sci. 2010 Mar 31. [Epub ahead of print]PMID: 20356892 [PubMed - as supplied by publisher]

秋になると落葉広葉樹の多くは紅葉する。他の葉を食べる昆虫同様、紅葉は葉の中に潜り込んで葉を中から食べる蛾(ハモグリガ)の幼虫にとっては困った事態である。まだ緑の葉を求めて動き回ることの出来ないぶん、紅葉はハモグリガの幼虫にとって他の昆虫よりも深刻な事態であると言えるだろう。

ハモグリガの中には変わった方法で紅葉に対抗するものがいる。Green-islandと呼ばれる現象を引き起こすのである。

Green-islandとはその名の通り、紅葉する葉の中で、蛾の幼虫が潜り込んでいる周辺だけが島のように緑に保たれる現象だ。以前からGreen-island部では植物ホルモンであるサイトカイニンが多く含まれることが知られていた。蛾の幼虫は何らかの方法でサイトカイニンを多く保つことで葉を緑に保っていると考えられるがそのメカニズムはわかっていない。

上記論文の著者らは抗生物質で処理するとGreen-islandが形成されなくなることを見出した。この結果は何らかの細菌がGreen-island形成に関与していることを示唆している。蛾の体内からは通常、ボルバキアが見出されるが、抗生物質処理によってボルバキアは消失した。ボルバキアゲノムからはサイトカイニン合成に関連する遺伝子(tRNA-IPT)が見つかっており、ボルバキアがGreen-island形成に関与している可能性が示唆された。

とても興味深い結果だと思うし、細菌の関与も間違いないとは感じるんだけど、ボルバキアの関与については自分はまだ完全には信じられない。一度培養細胞に持ち込んで、抗生物質処理した虫への再感染実験とか難しいのかな。


←のんびりですが再開します。
by g-hop | 2010-04-13 20:42 | 昆虫関係論文


カメムシの幼若ホルモン




Structure determination of a new juvenile hormone from a heteropteran insect.

Kotaki T, Shinada T, Kaihara K, Ohfune Y, Numata H.
Org Lett. 2009 Nov 19;11(22):5234-7.PMID: 19863071 [PubMed - in process]Related articlesFree article

幼若ホルモン(Juvenile hormone:JH)は昆虫の変態や生殖、表現型多型など様々な形質に影響を及ぼすセスキテルペンである。JHはV. B. Wigglesworth 博士により1934年に吸血性サシガメRhodnius prolixusから発見された。JHを塗布した部分は表皮の幼虫形質が保たれるので、博士は自らのイニシャルをサシガメに「落書き」することで塗布された部分のみが鋭敏にホルモンに反応することを示した

JHの構造はその後、様々な昆虫で明らかにされていったが、カメムシの属する半翅目の異翅亜目では典型的なJHと構造が異なることが示されていたもののその構造は明らかでなかった。上記論文ではWigglesworth元祖のJHもと言える異翅亜目のJHの構造について報告している。

チャバネアオカメムシからJHの産生器官であるアラタ体を取り出して培養し、培地中に放出された生産物をMSで解析。分子量から構造を推定し、不斉合成によって作成したJHライブラリーに含まれる分子の生理活性検定と、キラルカラムによる候補化合物と天然物の比較により、カメムシのJHはJuvenile hormone III skipped bisepoxide( JHSB3)であることが明らかとなった。

昆虫学の教科書に記載される重要な研究であることは間違いない。

ところでカメムシのJHに関する話については大分前の日記で触れていた。不斉合成でライブラリを作成し、そこからアッセイなんて話はあの時には出なかった筈。化学分野については疎いのだけれど、とても面白い手法だと感じた。


←応援よろしくお願いします。
by g-hop | 2009-12-09 18:59 | 昆虫関係論文


カイコの系統間のゲノム比較




Complete resequencing of 40 genomes reveals domestication events and genes in silkworm (Bombyx).

Xia Q, Guo Y, Zhang Z, Li D, Xuan Z, Li Z, Dai F, Li Y, Cheng D, Li R, Cheng T, Jiang T, Becquet C, Xu X, Liu C, Zha X, Fan W, Lin Y, Shen Y, Jiang L, Jensen J, Hellmann I, Tang S, Zhao P, Xu H, Yu C, Zhang G, Li J, Cao J, Liu S, He N, Zhou Y, Liu H, Zhao J, Ye C, Du Z, Pan G, Zhao A, Shao H, Zeng W, Wu P, Li C, Pan M, Li J, Yin X, Li D, Wang J, Zheng H, Wang W, Zhang X, Li S, Yang H, Lu C, Nielsen R, Zhou Z, Wang J, Xiang Z, Wang J.
Science. 2009 Oct 16;326(5951):433-6. Epub 2009 Aug 27.

カイコガ(以下カイコ)は中国において野生のクワコ(写真:虫央堂さん)より選抜され、絹生産用に家畜化された蛾である。考古学的な研究により、養蚕の歴史は少なくとも5000年以上であることが明らかになっているが、家畜化の初期過程がどのように進んで行ったのかは明らかではない。養蚕は多地域で同時多発的に起こったのか、それとも一部の地域で始まりその後で広まったのだろうか。

上記論文では29系統のカイコ、及び11系統のクワコを材料にゲノムの比較を行い、家畜化の過程を検討した。その結果、カイコは野生のクワコとは明確に区別された。このことはカイコの起源が多地域でないことを示唆する(但し、クワコのサンプリング地点には偏りがある)。また、その遺伝的多様性はクワコよりは小さいものの、比較的大きなものであった。この結果は家畜化が比較的大きな個体数を用いて行われ、その後も多様性が維持されたことを示唆している。鱗翅目昆虫は比較的近親交配による悪影響が出やすいと聞く。小さな個体数を用いた試みは失敗に終わったのかもしれない。

家畜化に伴って選択された遺伝子についても今回の解析で明らかになった。絹生産に関わる遺伝子に加えて、ショウジョウバエで飛翔に関連していると考えられるparamyosinなどの遺伝子が明らかになった点は興味深く感じる。

今回解析された系統は化性や休眠性、体色などについても多様な筈で、詳細にデータを比較することで様々な形質に関連する遺伝子の候補が明らかになるだろう。使いようによっては宝の山なのではないだろうか。


←応援よろしくお願いします。
by g-hop | 2009-11-13 19:13 | 昆虫関係論文


昆虫と放線菌の共生に関する総説



Actinobacteria as mutualists: general healthcare for insects?
Kaltenpoth M.
Trends Microbiol. 2009 Oct 21. [Epub ahead of print]

放線菌によって作られる抗生物質を利用するのは人だけではない。昆虫の中にも放線菌と共生することで抗生物質を利用し、身を守っているものがいる。上記のレビューでは放線菌を中心に、その他の細菌についても「共生と防御」という観点から概説を行っている。

放線菌に関してはこのブログでも度々取り上げてきたので改めてリンクしておこう。


触覚に放線菌を潜ませる狩蜂


キクイムシ:放線菌で共生真菌を保護

体中で放線菌を育てるアリ


←共生(笑)
by g-hop | 2009-10-28 18:56 | 昆虫関係論文


クモ:スパイダーマンのようではない?



「スパイダーマンが手から糸を出すのって変なんです。本当のクモは手(脚)から糸を出したりはしないんですよ」

って言う人に対して、「いやいや、最近になってタランチュラの一種が脚からシルクを出すのが発見されたんです」とかなんとか、飲み屋あたりで蘊蓄をたれたことのあるそこの貴方(笑)。

情報がアップデートされました。以後お気をつけください。



Silk production from tarantula feet questioned.

Pérez-Miles F, Panzera A, Ortiz-Villatoro D, Perdomo C.
Nature. 2009 Oct 22;461(7267):E9.

普通、クモは腹部にある糸疣から糸を出す。これに対し、以前のNatureに出された報告ではコスタリアンゼブラレッグタランチュラでは脚からも糸を出すことを報告していたわけだが、今回の報告では「腹部の糸疣を塞いだら糸のようなものは何も出せなくなった」ということを報告し、さらに脚の先端には糸を出せるような器官は見当たらず、以前の報告では感覚子を見誤った可能性について言及し、以前の研究に疑問を提示している。

これに対して、元の論文の著者であるGorbらは、脚由来の糸状の物質は間違いなく存在すること、昆虫においては脚のシルク生産器官の起源は感覚子であると考えられていることから、タランチュラにおいても同様の進化が起きている可能性に言及している。

要するに決着というわけにはいかないようなのだけれど、本当のところはどっちなんだろうなあ。


←知りたいのは真実。
by g-hop | 2009-10-26 20:16 | 昆虫関係論文


イモムシの起源はカギムシ(笑)



Caterpillars evolved from onychophorans by hybridogenesis

シロハラクイナさんの生物学・科学に関する雑感より。笑うしかないなあ。仮説というよりは妄想だよね。タイトルに(笑)とかつけたのは初めてなんじゃないだろうか。


←こちらにも妄想ブログが沢山ありますよ。

by g-hop | 2009-10-08 20:13 | 昆虫関係論文


蜂擬態ランの視覚的擬態



Colour mimicry and sexual deception by Tongue orchids (Cryptostylis).
Gaskett AC, Herberstein ME.
Naturwissenschaften. 2009 Oct 2. [Epub ahead of print]

オーストラリアに自生するラン(Cryptostylis)の中にはヒメバチ(寄生蜂の1グループ)の雌に擬態することで雄を誘引し、受粉に利用する種が複数知られている(写真はこちら)。

これまでの研究ではランはヒメバチの雌が放出するのと同様の匂いを放出し、雄を誘引することが明らかにされてきた。一方、花の色彩についてはあまり研究がされてこなかった。花の色彩は昆虫によって受粉される多くの植物にとって重要な形質だ。

上記論文ではCryptostylisの花の色彩についての研究を行い、匂いだけではなく視覚的にも擬態していることを示している。Cryptostylisの花は人の目にはハチの雌ににているようには見えないが、蜂の雄には雌に見えるようだ。

表面の微細構造なんかも気になる。調べられているのかな。


←おかげさまで2位です。引き続き応援を。
by g-hop | 2009-10-07 18:57 | 昆虫関係論文


遠隔操作されるカナブン



Remote radio control of insect flight

夢のような(笑)研究に多額の予算をつけることで有名なアメリカ国防高等研究計画局が予算を出しているHybrid Insect MEMS (HI-MEMS)研究のアウトプットの一つ。上記論文ではツノカナブンにバッテリーと遠隔操作可能な制御モジュール及び制御モジュールから脳と飛翔筋に繋がる微小電極を用いて昆虫の飛翔を遠隔操作することに成功している。脳の電極が飛翔の開始、停止、上昇を操作し、左右の移動は飛翔筋に繋がった電極で直接操作するというシステム。トルクアータオオツノカナブンも使用されていてカッコいい。

動画はWired visionの記事「生きたカブトムシをリモコン操作(動画)」からどうぞ。なお、カブトムシは誤訳でこの場合カナブンが正しい。


←更新が滞り申し訳ありません。
by g-hop | 2009-09-28 18:58 | 昆虫関係論文


分子昆虫学-ポストゲノムの昆虫研究-
このエントリは9月11日までトップに表示されます。



分子昆虫学-ポストゲノムの昆虫研究-
(ISBN978-4-320-05695-4)
神村 学・日本典秀・葛西真治・竹内秀明・畠山正統・石橋 純 編
A5,448頁(+口絵8頁),7500円

8月25日発売の、昆虫学の「教科書」。この本の意義については、神村さんが序で書かれている以下の一文に良く表現されていると感じる。

しかし,昆虫の分子生物学研究やゲノム研究の成果について,国外では何冊もの大著が刊行されているが,日本でまとまった本が書かれることはなかった.このことが,昆虫研究と分子生物学の結びつきを深めるに際して壁になっているのではないか,この壁を取り除けば昆虫研究がさらに進展するのではないだろうか,と考えた.そこで,昆虫類に関する最新の分子生物学・分子遺伝学研究の成果を一冊の本にまとめて紹介することにした. (序、より)

いわゆる大御所クラスではなく、執筆陣に若手が多いのが特徴。優秀な方々が名を連ねる中、恥を忍びながら私めも分筆させて頂いている。書き進めているうちに自分の専門分野も学生のころと比べると大分理解が深まりつつあるのだなと実感した。他の分野についても最新の知見を俯瞰できるようになっている。

個人での購入はもちろん、是非、大学や地域の図書館にリクエストしてみてください。大体、図書館というのはどんな本を買えば良のか、悩んでいるものです。


←こちらの応援も是非!
by g-hop | 2009-09-01 18:07 | 昆虫関係論文

    

とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。
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