DNA damage in storage cells of anhydrobiotic tardigrades.Neumann S, Reuner A, Brümmer F, Schill RO.
Comp Biochem Physiol A Mol Integr Physiol. 2009 Apr 7. [Epub ahead of print]
クマムシやネムリユスリカのような動物はカラカラに干からびても死なず、その後に水を加えると速やかに動き出す。乾燥によって誘導されその後の加水によって生き返ることの出来る無代謝状態はアンヒドロビオシスと呼ばれる。
このブログでも度々紹介してきたように、アンヒドロビオシス状態にある生物が高温、低温、放射線、超高圧といった苛酷な環境にも耐える。このような事実から導き出されるアンヒドロビオシス状態にある生物の一般的なイメージは「グレートで」「アンビリーバブルで」「ちょーかっこいい」といったようなものだろう。
ところが、以前からアンヒドロビオシス状態にある生物が乾燥中に相応のダメージを受けているのではないかと考える結果が得られていた。一番判りやすいのは乾燥期間が長くなると再加水後に「生き返る」個体の割合が減少していくという事実である。完全に乾燥し、「生物ガラス」状態になっても何らかの過程が進行して生存率を低下させるのだ。
上記論文ではコメットアッセイを用いてクマムシの一種が乾燥中に受けるDNAダメージについて報じている。
コメットアッセイは水和状態、あるいは一定期間乾燥させたクマムシから細胞を取り出して行われた。
その結果、乾燥後二日目くらいまでは水和状態とDNAダメージの程度にほとんど違いが見られないのに対して、乾燥期間が長くなるにしたがってダメージが大きくなることが明らかになった。また、加水後にもダメージが大きくなることが明らかになった。
DNAダメージの原因として著者らは活性酸素を考えている。しかし、自由水が欠損した状態で活性酸素が核酸にダメージを与えるかどうかは今後さらなる検討が必要だろう。
放射線耐性細菌では乾燥、あるいは放射線によるDNAダメージは強力な修復系により速やかに回復することが明らかになっている。アンヒドロビオシス可能な動物では修復系の実体についてはほとんど判っていないが、修復系が乾燥耐性を実現するための一つの鍵であることは間違いないだろう。

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